第5頁 一瞬で消える芸術と悪魔の舞 砂絵と異形の者たちが彩る聖体祭【パナマ発】

出典:Autoridad de Turismo de Panamá

ラ・ビジャ・デ・ロス・サントス、2026年6月4日 —  パナマ中部ロス・サントス県のラ・ビジャ・デ・ロス・サントスで64日、カトリックの祭礼「コルプス・クリスティ(聖体祭)」が開催された。街路には色鮮やかな砂絵が描かれ、その上を聖体行列と悪魔の仮面を付けた踊り手たちが進んでいく。信仰と民間伝承が交差するこの祭りは、2021年にユネスコ無形文化遺産に登録された。

 祭りの見どころの一つが、砂や塩、おがくずを使った色鮮やかな砂絵だ。地元住民や職人たちは完成までに12時間以上を費やし、聖母マリアや磔刑のキリストなどの宗教画を街路いっぱいに描く。だが、その作品は保存されるために作られるのではない。聖体行列が通過すれば踏み消され、その姿を消す。祭りのためだけに存在する、はかない芸術である。

 教会周辺では多くの職人や住民が砂絵作りに取り組んだ。中にはメキシコ・ゲレロ州から参加した職人の姿もあり、グアダルーペの聖母を描いた砂絵が来場者の目を引いた。祭りの前日から当日にかけて降り続いた霧雨が職人たちを悩ませたが、補修を繰り返しながらなんとか本番に間に合わせることができたという。

 一方、この祭りを最も特徴づけているのが、「ディアブリコス・スシオス(けがれた悪魔たち)」と呼ばれる踊り手たちの存在だ。巨大な角や牙を備えた仮面、色鮮やかな衣装をまとった悪魔たちは、太鼓や笛の音に合わせて踊りながら街を練り歩く。恐ろしい姿をしているが、その役割は単なる見世物ではない。祭りの儀式の一部として、聖体を象徴するキリストの前にひれ伏し、最終的には善が悪に打ち勝つことを表現する。

 祭りの前日には、「クアルテオ・デル・ソル(太陽の四分割)」と呼ばれる儀式が行われる。悪魔たちは町の各地から集まり、世界を四つに分ける様子を演じる。四つの区画は十字架をかたどっており、異形の悪魔たちの儀式にもキリスト教の象徴が織り込まれている。

 悪魔たちが手にしている白い袋状のものも興味深い。これは牛の膀胱を乾燥させて作られた伝統的な小道具で、かつては地面を叩いたり観客を追い回したりするために使われた。こうした仮面作りや踊りの技術は、若者たちが祭りに参加する中で受け継がれている。

 コルプス・クリスティは、カトリックの祭礼であると同時に、町の人々が一年をかけて準備する伝統行事だ。行列が通り過ぎれば砂絵は儚く消えてしまうが、その制作技術や信仰、そして人々の記憶は次の世代へと受け継がれていく。(EFE)

写真:Paul Peterson(CC BY-SA 4.0)

コルプス・クリスティは、キリストの体と血を象徴する聖体をたたえるカトリックの祭礼で、その起源は中世ヨーロッパにさかのぼります。スペイン中部の古都トレドで行われる聖体祭は特に有名です。

 コルプス・クリスティの伝統は、スペインによる植民地化を通じてアメリカ大陸各地に広がりました。ラテンアメリカでは各地の先住民文化や民間信仰と結び付き、独自の発展を遂げていきます。そうして、パナマの「ディアブリコス・スシオス(汚れた悪魔たち)」、ベネズエラの「ヤレの踊る悪魔」、ボリビアの「ディアブラーダ(悪魔の踊り)」など、悪魔を主役とする華やかな祭礼文化が生まれることになります。

 なお、今回の祭りで、メキシコから参加した職人が砂絵の題材としたグアダルーペの聖母は、1531年にメキシコで先住民フアン・ディエゴの前に現れたとされる聖母マリアで、現在では同国を象徴する宗教的存在として広く信仰を集めています。(國貞)

出典:Autoridad de Turismo de Panamá

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