第6頁 未完のまま立ち続けるGAM 文化施設が映す半世紀【チリ発】

ガブリエラ・ミストラル文化センター(GAM)外観(写真:Carlos yo/CC BY-SA 4.0)

サンティアゴ市、2026年6月12日 — 今年3月に8年近い中断を経て再開されたチリのガブリエラ・ミストラル文化センター(GAM)の増築工事が、わずか数週間で再び停止された。チリ最大級の文化インフラ整備計画として期待されていただけに、文化界には失望と反発が広がっている。

増築計画は2015年に始動したものの、施工会社の経営破綻により2018年に中断された。その後、ガブリエル・ボリッチ前政権が再開を決定し、今年3月2日に工事が再開されたが、3月11日に発足したホセ・アントニオ・カスト政権は財源不足を理由に翌月には事業の中止を決定した。

計画には2,500席の大ホールや大規模公演向け設備の整備が含まれており、総事業費は約1,140億ペソ(約1億2,900万ドル)に上る。GAMのアレハンドラ・マルティ館長は、新ホールが完成すればチリは国際的な舞台芸術ネットワークに加わり、これまで国内では実現が難しかった大規模公演の受け入れも可能になると期待していただけに、今回の決定に失望感を示した。

また、サンティアゴ首都圏州のクラウディオ・オレゴ知事も、今回の決定によって10年以上に及ぶ取り組みが失われると政府の対応を批判した。文化団体や建築関係者からも再開を求める声が上がっているが、一見すると文化事業の見直しにすぎない今回の決定がこれほど大きな議論を呼ぶ理由は、GAMが単なる文化施設ではないからだ。

現在のGAMは、1972年にサルバドール・アジェンデ政権が開催した第3回国連貿易開発会議(UNCTAD III)のために建設された建物を前身とする。当時の施設はわずか275日という異例の短期間で完成し、国際会議終了後は文化施設として利用される予定だった。

ところが翌1973年、軍事クーデターによって状況は一変する。爆撃を受けたラ・モネダ宮殿(大統領府)に代わり、軍政はこの建物を拠点として使用した。文化交流の象徴として誕生した建物は、その後、軍事政権を象徴する施設へと姿を変えることになった。

民政復帰後は十分に活用されない時期が続き、一時は荒廃した状態に陥った。さらに大規模火災にも見舞われたが、2010年にミチェル・バチェレ政権の下で改修され、現在の文化施設として再出発を果たした。

チリの建築家ソフィア・モンテアレグレ氏は、この建物を「パリンプセスト(何度も書き換えられた羊皮紙)」と表現する。アジェンデ政権、軍政、民主化、そして文化施設としての再生 ━━ GAMは半世紀にわたるチリの政治と社会の変遷をその身に刻んできた。

今回中止された増築計画は、そうした再生の歴史を完成させる構想でもあった。文化界からは事業継続を求める声が相次いでいるが、現時点で再開の見通しは立っていない。

それでもGAM側は計画を完全に断念したわけではない。マルティ館長は、官民双方の資金を組み合わせた新たな資金調達の可能性を探る考えを示しており、GAMが目指してきた「文化地区」の完成に向けて模索を続けている。半世紀にわたりチリ社会の変化を映してきたこの建物は、今なお新たな転機のただ中にある。(EFE)

GAM内部 (写真:Rodrigo Pizarro/CC BY-SA 2.0)

GAMの施設名は、ラテンアメリカ初のノーベル文学賞受賞者であるチリの女流詩人ガブリエラ・ミストラル(1889~1957)にちなむものです。ミストラルの名は現在も学校や図書館、文化施設に数多く残されており、チリ文化を象徴する存在として広く敬愛されています。(國貞)

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